アメリカ「対日感情」紀行

朝日新聞の記事の中で、「アマゾン・ドット・コムの光と影」という本が取り上げられていた。「アマゾン・ドット・コムの光と影」自体は、amazon.co.jpでのreviewではあまり評判がよろしくない。(それが中立な意見なのかは、かなり疑問だけど)。


ということで、他の著作はどうななのかしらと、おなじ著者の 「アメリカ「対日感情」紀行」を読んでみた。


アメリカ「対日感情」紀行

アメリカ「対日感情」紀行


正直力作だとおもう。内容もそこそこおもしろい。ただ、決定的に疑問なのが、この取材方法でインタビューしていれば、日本に好意的な意見が大半になるのが当然じゃないか、ということ。著者は、メールをつかって、各地の日米協会や地方事務所に取材相手のコーディネイトを依頼している。その結果インタビューしている相手は、自宅に日本庭園があったり、日本人と結婚している人たちがめずらしくない。このサンプリングだと、「そういう事例がある」ということはいえても、全体のトレンドについては何も言えない。

結局、最後までいって、「日本嫌いでないアメリカ人もいる」という結論しか得られない。ひょっとして著者は、多くの日本人が「すべてのアメリカ人は日本嫌いである。例外はない」と、考えているに違いないと思っていたのだろうか? いくらなんでもそれは・・・と思うのだけど。

これが、誰も知らない社会問題を提起するならこれでもいいかもしれない。が、わざわざ50州まわってインタビューを集めるのに、自分の予断を補強する形でのサンプリングを行ってまとめるってどうなんだろう?

この本での注目点は、MITのジョン・ダワー教授のインタビューだと思う。日米摩擦の背景にお互いの持つステレオ・タイプが影響しているという彼の分析は興味深い。どっちかというと、次は、この著者の本より、ダワー教授の本を読んでみたいと思う。(ただ、ダワー教授の本って、いい値段していて・・・「敗北を抱きしめて」が、上下あわせて5000円超えますから)