著者があとがきでも書いているように、ハードボイルドという帯は若干語弊があるかも。She's Rain や Early Autumn の平中悠一の作品、なのだからと思って読むのがたぶん正解。
1997年のこの作品は、たぶん平中悠一が30を越えた辺りで書いた作品で、その年齢での迷いが主人公にかなりダイレクトに投影されている、ように読める。(ただ、平中悠一だから、そう読めるように、意図してもっていった作品という気もしなくもない)
ということで、たぶんこの作品の主題は、30になった「男の子」の迷いだとおもう。で、それは成功している。
実在の人物を織り込む技法は、川端裕人の「夏のロケット」に共通する手法。ただ、おなじ兵庫県出身ながら、千葉育ちで基本ヲタな川端裕人(多分)と違って、神戸出身の平中悠一の小説は、西村しのぶと同じ雰囲気があることを再確認。「男の子」の側からみた世界だということをのぞけば。で、同時に、大江千里にも通じる一種のテレが見える気がする。(大江千里は大阪出身だけど)
- 作者: 平中悠一
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 1997/07
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (1件) を見る