なぜ社員はやる気をなくしているのか

朝日の書評にでていて気になっていたのだけど、経セミにもかるく紹介がでていたので買ってみる。

この本の主張(タイトルのへの回答でもあるのだけど)は、社員がやる気をなくしているのは、従来アフターファイブのノミニケーションの構造の中で維持されていた、内発的動機付けの構造が失われたから。ということで、この本の趣旨は以下の2点とのこと。

1.その組織を進化させたり退化させたりしていく「価値観」の役割
2.人の内発的な動機はどのようにすれば引き出すことができるか

この本の特徴的なところは、徹底して、社員には潜在能力はあり、それが引き出せないのはマネージメントの問題であるという立場にたっていること。

なので、グループの成果はマネージメントのリーダーシップではなく、メンバーの力を引き出すスポンサーシップが必要というのがこの本の主張。
具体的には社員が自分で考え問題提起できる「場」を設定すること、そして、その「場」が機能するために、そこで率直な発言をすることがペナルティが発生しないというコミットメントが必要になる。

スポンサーシップが形成する「経営に対する信頼感」や「仲間からの協力」が、セーフティネットを作り上げる。セーフティネットは主にスポンサーシップによって作り上げられる、変革に不可欠な前提条件である。セーフティネットがある程度用意されているという条件があってはじめて、誰もが内発的な動機を醸成させることができるのである。(中略)スポンサーシップが全く役割を果たしていない組織で内発的な動機を大切にして仕事をしようとするのは、セーフティネットなしで危険な綱渡りをするようなものなのである。
(136-137)

このスポンサーシップが確保された上で、内発的な動機付けを維持するには「質の高いチームワーク」が必要だとする。

こうした働き方を実現していくためにはまず、社員の内発的な動機が引き出されて行かなくてはならない。そして、その条件を担保しうるのがスポンサーシップなのだ。さらに、この内発的な動機を持ち続けるために不可欠なのが、仲間とのチームワークである。(P146)

「質の高いチームワーク]をつくり込んでいくための前提として、ビジョンの共有が指摘される。



内発的動機付けといえばデシだと思うのだけど、その理論とも整合的。ただ、デシの最初の著作が日本で紹介されたのは、1980年で当時は完全な学術書、実際に内発的動機付けが言われ始めるのは90年代後半以降のようにおもう。そういう点で、内発的動機付けをベースにマネージメントを語るのは、いまでもまだ新しいことかもしれない。

ビジネス書としてかかれていることもあって、よく言えば実践的。わるくいえば、論拠は曖昧。でも、そもそもビジネス書なので、この本自体はいい本だと思う。


なぜ社員はやる気をなくしているのか

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