途上国の農村研究とフィールドワーク

harowanwan2007-08-10

経済セミナー8月号の特集は「経済は現場で動いている!」というどっかで聞いたようなタイトル。



その中にある、「途上国の農村研究とフィールドワーク/藤田幸一」は、バングラディシュにおけるグラミン銀行に関するレポート(の、さわり)。

グラミン銀行といえば、途上国においてマイクロファイナンスという手法を成功させたことで有名だし、創始者ムハマド・ユーヌスのノーベル平和賞受賞で一般にも有名になった。一般的には、農村部において、連帯保証関係にあるグループのメンバーに対し、比較的少額の貸し付けをおこなうことで、農民の自立を助けた事業として知られている。

ところが、藤田はグラミン銀行の資金のかなりの部分が、農村内での又貸しに利用されていると指摘する。

調査の結果、ローンの投資先の約半分は、グラミン・バンクが想定するような小ビジネス(たとえば、籾米を購入して、籾摺り・精米して販売する精米ビジネスなど)の運転資金に使われていたが、残りはそうではなかった。典型的なのは、他の村民への又貸しである。村では、1000タカ(当時、1タカは約3円)を貸すと、返済元金に加え、数ヶ月後に籾米2〜3モン(1モンは、約37kg)を利息として受け取れる慣習になっていた。年利に換算すると、約60%のインフォーマル金融である。貧しい土地無し労働者世帯にとって、こうした利息のみで飯米の一部がまかなえるようになれば、それは非情に大きな経済的意味を持っている。(P29-30)

文章は、特集のテーマにそって、だからフィールドワークは大切(フィールドワークの短所も記述されている)というまとめにはいっていくのだけど、グラミン銀行の実態が紹介されるのは珍しいようにおもう。

著者のレポートは以下の本にまとまっているとのこと。かなり興味を引かれる。

バングラデシュ 農村開発のなかの階層変動―貧困削減のための基礎研究

バングラデシュ 農村開発のなかの階層変動―貧困削減のための基礎研究 (地域研究叢書)

バングラデシュ 農村開発のなかの階層変動―貧困削減のための基礎研究 (地域研究叢書)