予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

少し前から話題になっている、行動経済学の本。
行動経済学については、去年「経済は「感情」で動いている (光文社新書)」とか、「経済は感情で動く―― はじめての行動経済学」とか出てきていて、軽い流行のような気がするのだけどなんでだろう?


この本は、実験を紹介して、その結果の解釈を示するという形で行動経済学のエッセンスを紹介している。目次は以下。

1章 相対性の真相
2章 需要と供給の誤謬
3章 ゼロコストのコスト
4章 社会規範のコスト
5章 性的興奮の影響
6章 先延ばしの問題と自制心
7章 高価な所有意識
8章 扉を開けておく
9章 予測の効果
10章 価格の力
11章 私たちの品性について その1
12章 私たちの品性について その2
13章 ビールと無料のランチ


それぞれの章の内容は、どれも興味深いのだけど、特に興味を引いたのは、12章で扱われていた代理通貨の問題。ここで扱われているのは、現金を前にすると人は倫理的にふるまうのに、間に現金ではないものを介在させることによって倫理観が極端に弱まるという実験。
ここから、不正経理のような問題がなぜおこりやすいかということが説明されている。


これに対して、現金を使わない取引はなんと自由なのだろう。かならず都合のいい正当化が見つかる。職場の赤鉛筆を持ち帰ることも、冷蔵庫の缶コーラをもらっていくことも、ストックオプションの日付を改ざんすることだってでき、どこももっともな言いわけがたつ。現金を使わない取引では、自分を不正直な人間だと思うことなく、不正直になれる。良心がぐっすり眠っているとおぼしきうちに、盗みを働くことができるのだ。
 どうすればそれを正せるだろう。たとえば、備品置き場の物品すべてに値札をつけたり、株式やストックオプションの金銭的な価値がはっきりわかるよな言い方をしたりするのも一つの手だ。しかし、もっと視野を広げて、わたしたち自身が代用貨幣と不正をしてしまう傾向との関連に気づくべきだ。現金から一歩離れたとたん、自分では想像できないほどの不正をしてしまうのだと自覚する必要がある。(P302,303)


予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」