草思4月号 特集八十年代の意味

harowanwan2005-03-16

草思社のPR雑誌の4月号を入手。特集は「八十年代の意味」
特集の記事はどれもおもしろい。

  • 大野正和「まじめ人間を死に導く職場環境」

職場環境が、協調型から個別化に変わっていく中で、そのひずみが「メランコリー親和型」の人に集中的に現れたという指摘。70年代まで一種理想的な仕事人であった、まじめで几帳面、責任感が強く他人に非常に気を遣う「メランコリー親和型」の人が、結果的に過剰労働においこまれているという指摘はかなり正しいとおもう。この状況の解決策として、著者は2つの方法を提示する。一つは、職場の共同性を復活させること、そしてもう一つは仕事の独立性をさらに高めること。著者自身は、前者を指向しつつそれは難しいと認識しているのではないかという気がする。

  • 三浦展「八十年代渋谷論から現代のショッピングモール論へ」

アクロスの元編集長による、世に広まるパルコとディズニーランドを関連づける論への異論の提示。
パルコのインサイダーからみると、パルコパート1の売り上げは、79年をピークに80年代を通じて下がり続けたのだという。そして、パルコとは、ディズニーランド的な人工環境を指向するものではなく、むしろ異質な物を受容するものであり、堤清二のセゾンとパルコの増田通二とでは指向も違うという指摘はなるほどと思わせる。80年代はパルコ的なものが衰退しつつディズニーランド的なものが広まった時代だというのである。
ただ、後半のポパイやノンノを読んでいた若者が、今はイオンを好んでいるという指摘はどうだろうか?今、イオンにいる40代は確かにポパイやノンノを抱えていたかもしれないが、70年代後半には公園通りではなくダイエーと地場の商店街を歩いていたのではないかと思う。だって、イオンのコンセプトはなんたって「タヌキやキツネのでるところに店を出せ」だ。都心にはイオンはないし、16号線の内側まで拡げてもそんなにないんじゃなかろうか?アクロス風にいうなら、イオンは「第四山の手」より外側の住人のもので、イオンが奪ってきたのはそこにあった地場商店街の商圏だろう。
同じ著者の「ファスト風土化する日本」もそうだが、最近のこの人の論は郊外型ショッピング施設への怨嗟が感じられる。それが、著者のすててきた故郷へのアンビバレントな感情の表れだと思えるのは考えすぎだろうか?