経済セミナー 2006年2/3月合併号

harowanwan2006-02-05

今月の経済セミナーは合併号。でもって、特集のその2はケインズ。「一般理論」の刊行70周年記念。

ケインズ研究の第一人者の文章。わずか、6ページなのだけど、読み応えがある。というか、岩波新書の「ケインズ」って何度か読んでいるはずなのできれいに忘れていることに呆然。ケインズの理論の中心は、「流動性選好理論」と「乗数理論」だと言われてふーんじゃまずいよね。


で、このなかで、伊東光晴は、イギリスの経済学は2つの対立する思想と理論を生んでいるという視点があると述べている。この2つとは


  アダム・スミスと後期重商主義
  リカードマルサス
  マーシャルとマンチェスター学派
  ケインズとロンドンスクール

という組み合わせだ。伊東はこの2者は国内と海外に利害をもつ資本・人の対立であると読む。リカードマルサスをそういうふうに比べてみたことはなかったので新鮮。


もう一つ興味深かったのは、前号からの続きであるのだけど

  • 平成経済政策論争/ マネーサプライ論争 野口旭

これは、90年代以降の長期停滞の原因を当時の経済論争を整理しつつ説明していくもの。現在の分析では、93-94年の時期の日銀の金融政策に、長期停滞の原因があるのだそうだ。

で、その論争は、岩田規久男と翁邦男との論争によって始まり、対立は、マネーサプライの拡大・収縮を、景気変動の「原因」としてみるのか、その「結果」としてみるかにあったとしている。で、93-94年という時期(その後も含め)において、日銀は、マネーサプライを「結果」として考えていたという。そうならば本質的に金融政策は景気政策とはなり得ないということになる。それどころか、かえって状況を悪化させたということが指摘されている。

このように日銀が金利を安定化させし続けようとすることは日銀が景気拡大とともにベースマネー供給を増やし、景気悪化とともにそれを減らすことを意味する。  (中略) つまり、金利の安定化を目標とするような同調的な金融政策は、景気循環を抑制するのではなく増幅してしまうのである。


で、その後のこの論争は、積極的な金融政策を推進すべしという立場と、日銀擁護派にわかれて進行していく。前者に属するのが、岩田規久男、原田泰、宮尾尊宏、新保生二らの名前が挙がっている。この主張においては、インフレ率がが急速に低下している状況では、実質金利は低下しておらずむしろ金融は引き締められていたとみるわけである。

で、ここで名前のあがった、原田泰が同じ号に載せているのが

ここでは、2001年以降の、量的緩和政策がどれくらい効果があったかを数理経済のモデル分析でやっているのだけど、結論だけいってしまえば、「量的緩和は効果があった」と分析している。



なんか、今月号は盛りだくさんというか興味のある記事が多いのでもう少し続けます。