国債危機の深層/ 日経新聞

日経の経済教室が、4月11日、12日と「国債危機の深層」というタイトルで国債の話題をとりあげていた。というところで、国債についての問題を整理してみようと思う。


最初に国債に関する数字を再確認しよう

http://www.mof.go.jp/gbb/1712.htm

  • 2005年12月末の段階の、国債の残高は663兆7743億円
  • この他に借入金、政府短期証券(FB)を加えるとの合計は813兆1830億円。

これに対し、18年度予算は79兆6,860億円が当初予算である。内訳は以下

  • 税収見込 45兆8780億円
  • 公債 29兆9730億円

で、2005年の名目GDP

  • 502兆9000億円

この数字をつかって、よくお父さんの月収xx円の家庭で、xx円の借金があって、その支払いにxx円もつかっている家計が健全なのかという議論があるが、とりあえずそーゆー説明をする人は、あまり信用しない方がいいと思う。家計と財政にはおおきな違いがあって、家計の主体の人間はそのうち死ぬけど、国家は(通常)なくならない。なくならないから、「最後に精算」というのが永遠にこないと考えて問題ないということになっている。

そこから例のドーマーの定理がでてくる。

この仕組みの話を読んだのはかなり昔だけど、確か松下幸之助の本だったことを覚えている。国債をいくら発行しても、それ以上の経済ののびが期待できるなら、問題ないから借金を最終的に返すことを考える必要はない、だから今こそ日本を開発しようという話だった。ただし、ドーマーの定理という言葉は使っていなかったと思う。(松下幸之助が生きていたころの話ですから)

ドーマーの定理というのは、簡単にいうと


名目成長率≧名目金利国債金利


ならば、とりあえず借金を減らす必要はないという話だ。*1「お父さんの給料が」という話は、この状況の説明にはふさわしくない。
で、じゃあ今の状況はどうかというと、デフレで名目成長率がマイナスだったわけで、名目金利は低いとはいえいつもプラスだということを考慮すればどう考えても


名目金利国債金利>名目成長率


なわけ。それについて異論を唱えるひとは、あんまり居ない。だから借金を減らす必要があるということは事実。だからということで、単純に支出を減らせばいいかというと話はそう簡単ではない。

これを別の面からいうと、いくら節約してもその結果として名目成長率がマイナスになってしまったら、逆に実質的な借金は増える一方だということになって何やってんだかわからなくなってしまうのだ。政府支出は、経済にとってそれなりに大きな支出なのでこれが落ちれば、普通成長率も落ちる。(ちなみに、名目金利と名目成長率の差は、2000年にはいったんかなり小さくなっていたのだけど、2001年から再拡大した。小渕政権がおわったのが2000年)


ということで、ここまま行くと破綻するというところまではいいのだけど、じゃあどうするかという道筋を考えるときに、名目成長率を落とさないように気をつけながら、気長にいきましょうというのがリフレ派の主張で、とにかく借金を減らしましょうというのが、オリジナルな小泉政権の経済政策だったわけなのだけど、さて今後どうなるかな。

いちごえびすの書き込みをみていると、いまの景気好転は国内需要によるとはいいつつ、輸出産業の二次的な需要だと考える方が数字的に一致するという話もあったりするんだけどね。もし、その通りだとすれば、景気の状況はアメリカ次第という身も蓋もない話になるのだけど、さてさて。

*1:名目金利国債金利は正確には同じではないのだけど、とりあえず同じで考えてもあんまり違いはないと思うのでそこのところよろしく。