現代経済学の誕生というタイトルより、おそらくサブタイトルの「ケンブリッジ学派の系譜」のほうがこの本の内容を表している。(ま、いきなりケンブリッジ学派では、新書のタイトルとしてはキャッチーではないかもしれないけど)
この本、基本的にはマーシャルからケインズ(周辺)にいたる、経済学史の本。マーシャル、ピグー、ロバートソン、ホートレー、ケインズの5人について、章立てしている。でもって、基本的なメッセージは、「すべてはマーシャルにある」だ(と思う)つまり、ケインズの考えと言われているもののかなりの部分は、マーシャルあるいはその他のケンブリッジ学派の主張に見られる物で、ケインズ独自の説というのは、実はそんなに多くない。ケインズの業績は、それと理論体系としてまとめ上げたことだというのが、この本の主張。
で、今回の発見
マーシャルは「原理」第五編の分析で、主に供給側の事情に応じて「一時的」「短期」「長期」「超長期」の四種類の時間区分を設けている。(P23)
そ、そうだったのか。マーシャルってそこまでやっていたとは知らじ。
そして、ロバートソンの業績。いまや、ほぼ無名といえる(広辞苑には載ってなかった)ロバートソンをこれだけ紹介しているのは初めて。*1
ただし、日経だったかの書評にもあったが、ホートレーをケンブリッジ学派というのか?といわれるとそこはどうもと思うけど、ケンブリッジ学派周辺の人物としてホートレーをだして、ケインズやロバートソンとの差異をわかりやすくするというのが著者の意図だったのでは?とはおもう。
それにしても、ロバートソンについては、表現がかなり好意的だと思うな。もっというと、マーシャルよりロバートソンのことを書きたかったんじゃないかな。この著者。
ロバートソンは非常に謙虚な人間であったが、その裏返しとして、戦陣をないがしろにするケインズ(あるいはケインジアン)がケンブリッジの共有財産のうち不当に大きな部分を自分(ケインズ)の業績として独り占めしようとしたのと対照的に、ロバートソンは自分の業績のあまりに多くの部分をマーシャルに帰したため、過小評価を被ることになった。華々しい革命の舞台に上がることを派決して望まず、伝統の守護者を持って自認する燻銀のような人物であった。(P99)
- 作者: 伊藤宣広
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