賃金の不平等化と労働制度の変化 -

引き続き、現代思想のなかの記事から。

  • 賃金の不平等化と労働制度の変化 / 宇仁宏幸(P166-176)

統計調査をつかった、日本における格差の検証がなされている。
格差問題については、ジニ係数の拡大を問題視する意見と、ジニ係数の拡大は、高齢化の影響であり、全体的には問題ない、とする立場があるのはご存じのとおり。

要点は以下の部分。

しかし、「2004年全国消費実態調査」の公表調査結果と、前回の1999年調査結果とを注意深く比較すると、この間に、「見かけ」ではない真の格差拡大、つまり年齢階層内格差拡大が広範囲で発生していることがわかる。「世帯属性別年間収入の時に係数」という表には、「全世帯」と「勤労者世帯」という二つの集計区分で年齢階層別のジニ係数がまとめられている。「勤労者世帯」とは世帯主我労働者の世帯であり、これに自営業などの世帯を加えたものが「全世帯」となる。1999年と、2004年の年齢階層別辞に係数を比較すると、「全世帯」と「勤労世帯」ともに、60歳未満のすべての年齢階層において、時に係数が上昇している。このような広範囲の上昇は、1980、90年代にはみられなかった現象である。(P167)

この要因として、企業規模間の格差、男女間の各格差、学歴間較差等がすべて99年と2004年の間で拡大しているのだそうだ。

賃金の分散係数・・・・「賃金構造基本統計調査」では、賃金分布の広がりの程度を示す、「十分位分散係数」という値が、学歴、性、年齢階層などの独性別に公表されている。ジニ係数と同様に、この値が大きいほど賃金格差は大きく、一般に、年齢階層が高いほど、分散係数も大きい。男性については、99年と2004年を比較すると、各学歴とも五十九歳以下のすべての年齢階層において分散係数は増加している。つまり同一学歴同一年齢階層に属する労働者内で賃金格差は拡大している。(P170)

では、拡大している、という事実認識をおいた上で、それがどんな効果を生むのだろうか。良く言われる、成果主義の導入によって業務効率が(全体として)上がる、という点に関して、以下のような引用がされている。

ポントゥソン(2005)は先進諸国の経済格差の水準と変化について、体系的な国際比較分析を行っている。彼の中心的な問題意識は、平等性と効率性とはトレードオフ関係にあるという通念を実証的理論的にくつがえすことにある。彼が「社会市場経済」とよぶ平等性が高い、北欧諸国やドイツなどのグループと、「自由市場経済」とよぶ平等性が低いアメリカ、イギリスなどのグループが存在するが、量グループの経済成長や雇用などの指標を詳しく比較すると、大差はないことを彼は実証している。また、所得格差や賃金格差で示される平等性の違いは、両グループ間の諸制度の違いによってもたらされてていることを単純な創刊分析によって明瞭に示している。(P173)


全体として効率がかわらないなら、成果主義にする必要はないともいえるし、成果主義で別に悪くない、ともいえる。

とすれば、判断基準は、その社会における「公正」の捉え方の違いが反映されていればいいのかもしれない。