できる社員はやりすごす
ベストセラーになった「虚妄の成果主義」なのだけど、そのエッセンスは、ほぼ前作、「できる社員はやり過ごす」に含まれている。この2作、タイトルから受ける印象より、かなりまじめに経営学書。ということで、「できる社員はやり過ごす」の内容をダイジェスト。
この本では、いくつかのキーワードが取り扱われている。目次からひろったのが以下。(これらのキーワードは、いずれも肯定的に取り扱われている。)
「やり過ごし」
ここでいう、「やり過ごし」とは、優先順位の判断のこと。業務が増加するに従って、まじめに全部やっていたのではとても終わらない。なので、優先順位を判断して、できる物からではなく、やるべき物からやるというスキルが必要だという話だ。では、やるべき物でないと判断されるのは何か、というと、重要度と指示の内容が「あいまい」なもの。
「尻ぬぐい」
で、実際に業務を回していく上で起こる問題点をカバーし、システムに破綻をきたさないようにするのが、「尻ぬぐい」。尻ぬぐいは、受動的でストレスの多い部分だが、会社全体としては必須の業務と指摘されている。
「泥をかぶる」
いかに、うまく「尻ぬぐい」をこなせるか、ということが評価基準となって、昇進の差になってくるのが、日本の年功序列とよばれる制度だというのが分析だ。過大な負荷をかけることで、能力差を顕在化させるという選別制度になっているというのである。
「見通し」
とはいえ、「尻ぬぐいは」はストレスの多い業務であるので、長期にわたっては耐えられない。これを許容するには、一定の時間がたてば、この立場から抜け出せる、という共通認識「見通し」があることが重要な要素になっている。
「未来傾斜原理」
本来的に不確実な、将来の「見通し」をあてにして行動するということは、未来に対する確度を高くみる、ということで、日本では未来に対する割引があまりされない、だから未来に対して投資=長期にわたる会社へのコミットメントが維持可能になっている。
というわけで、この本のキモになるのは、「未来傾斜原理」で、将来に対する割引率が、日本と海外(特にアメリカなど)とは違う、というのが著者のベースとなる問題意識。
そういえば、ホーフステッドがIBMの社員をサンプルに調査をおこなった、「多文化世界」の中で日本人は長期的な観点で思考するということを指摘していた。というのは「未来傾斜原理」と基本的に同じ指摘か。
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