プラットフォーム

ミッシェル・ウエルベックのプラットフォーム読了。
日本市場でのデビュー作の素粒子は筑摩からでているので、結構難解かも?とおもってみたら、ストーリー展開自体はいたってシンプル。かなり読みやすい。

話は、美術展の運営の仕事をしているさえない中年男の主人公が、旅行先で知り当たった女性と恋におちて・・・とこれだけだとほとんどハーレクイーンの逆パターン。文章は主人公と、その恋人の上司との二人の視点が交代ででてくるが、女性の視点は一切出てこない。内容は、延々とセックス描写が続くのに、表現が妙に乾いていて、無味な感じ。その無味は虚無であって、主体なんてもう存在しないほうが楽ちんだという身も蓋もない状況を書きつらねているというのがこの小説だ。

後書きで訳者は、ウエルベックの主な読者は「インテリ層ではない。中産階級のいわゆる市井の人々だ」と書いているが、それにしちゃかなりスノッブバルザックの言葉から始まって社会学や経済学の用語がちらほら顔をだす。主人公は、リゾートで退屈しながらカントを読んでいる。

もし、この本が「普段本を読まない」という意味での「市井の人々」に支持されているのだとしたら、結果的に、渡辺淳一と同じ読まれ方をしているとしか思えない。要するに、読んでいてさほど恥ずかしくないポルノ。
ただ、もう少し深読みすれば、確かに作者のこだわりは見えてくる。

つーことで、私的には一応お奨めです。この本。


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