現代思想 2006年4月号 / 特集:教育改革の現場

教育基本法の改訂がカウントダウンな状況、ということで、現代思想の今月号の特集は、「教育改革の現場」。


現代思想」の問題意識は、以下の討論の最初にダイレクトに表現されている

三宅:私は、公園などでは、今の教育改革というのは、はっきりいって「教育問題」ではありません、と言っています。むしろ労働問題ですと。「教育改革「といいながら、実際には、今までの教育のどこがよかったか、どこが悪かったかと言うことをきちんとデータを出して分析し、原因や方法を検証して、じゃあこういう改革に、という議論がなされた様子はありません。基本的に、上からこういう方針でやった方がいいんじゃないですか、という。じゃあどういう方針なのかというと、今、小泉改革で「構造改革」と言っていますが、新自由主義改革、すなわち市場至上主義的改革です。(P45)

ほぼ、この線にそったかたちでの批判が、以下の文章だ。

  • 教育「民営化」の意味 佐々木賢

民営化はPrivatization であり「私物化」であるとして批判し、「民営化」されたイギリス、アメリカで何が起こっているかを紹介している。(多少教育から離れている点もあるが)起こっているのは、教育サービスの格差の拡大だ。市場化によって公的な支出がカットされた結果、スケールメリットのある地域と同じコスト過疎地において教育サービスの水準が低下する。民間企業による学校が、経営不振で閉鎖され、学校をもとめて漂流することになる。


ただ、全体を通して感じるのは、教育以外の事例を引いての批判がかなり多いという違和感だ。教育改革の問題が、実は「労働問題」であると解釈するにせよ、そこから軍国主義までひっぱってしまうと、むしろ「教育」の議論ではなく、「教育」をネタにした、別の議論のように思えてしまうのだけど。



ところで、それとは別の観点から興味深かったのは以下の箇所だ。

  • 「不純」なる教養 白石嘉治

日本政府は1979年に国際人権規約を批准した。だが、今日に至るまで、大学を含む高等教育の「漸進的」な「無償」化が定められた条項(経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約[A規定]13条2項C項)の批准を留保し続けている。童謡に留保しているのは、日本以外では、ルワンダマダガスカルだけである。このきわめて例外的な日本政府の状態に対して、国連の社会権委員会は、2006年6月30日の期日をもって留保を撤回するように勧告している。(P186)

参考として上げられているURLは以下
http://www.jfpu.org/2006data.htm