ウェブ進化論

最近、読者層が高齢化しているんじゃないかと思っている週刊アスキーなのだけど、かならず読む記事が2つある。一つは、歌田明弘の「仮想報道」で、もう一つは山崎浩一の「今週のデジゴト」。

で、先週号(4/18号)の「今週のデジゴト」では、はやりのweb2.0の話から、ロングテールの話になっていて、この本がネタだと書かれていたわけである。つーわけで読んでみたら、大変参考になったのでお薦め。



この本の中では、google とは、いったい何者なのかという話を主題に、世界で何がおこっているかということが説明される。

googleを成立させたのは、3つの現象(インターネット、チープ革命オープンソース)であり、これによって、「不特定多数無限大」の層が発信する情報は、ほぼゼロのコストで流通しはじめる。こうして起こるのは、ロングテールという従来の方法では効率が悪くて商売として成立しなかった市場の成立であり、「知の世界の秩序」の再編成であると説く。

ロングテールの話は、wikipediaの説明を読めばだいたいわかるとおもうけど、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%AB

ロングテール以上にこの本の中で気になった記述が以下

生活コストの安い英語圏発展途上国の人々にとっては、生活コストに比して驚くほどの収入がアドセンスによってもたらされる。ネットの世界で、あるトラフィックを集めて月に500ドル稼げるとすれば、そのサイトを発展途上国の人が運営していても500ドル、先進国の人が運営していても500ドルである。(P160)

ここで起ころうとしているのは、知的生産における世界規模での価格の平準化だ。農業生産や工業生産、そしてIT技術の世界でおこった現象が、文化系の知的生産でも起ころうとしているということだ。

今はまだ英語圏だけの現象だから、日本は「日本語」という文化障壁に守られている。ただ、それも時間の問題だろう。テキストデータの自動翻訳は今でも行われているし、その精度は今後上がるはずだから。ビジネス書やストーリー優位の小説だったら自動翻訳を介することで、世界市場がターゲットに成りうる。そうなったときに、確かに世界の所得は平準化されるのかもしれない。と、同時に世界の所得は、さらに国を超えて二極化されると考えるのが合理的だ。つまり、超リベラルに「世界中の情報を組織化し、それをあまねく誰からでもアクセスできるようにすること」というミッションを掲げるgoogleは、その一方でリカードの比較生産費説に与するグローバリズムの最大の具現者になるのかもしれないということだ。


その中で、普通の人に残された領域は非常に狭くなると思う。

その答えとして、この本の中では、一つのヒントとしてジョン・バッテル/John Battelle の発言として引用された以下の言葉が示されている。コンピュータでの処理が難しいところを、いかに見つけ出すかが生き残りのカギなのだろう。

グーグルとヤフーの本質的違いは、この二社が映像コンテンツを巡って戦うことになる将来、もっとはっきり見えてくるはずだ。(P95) 

originalは以下
http://battellemedia.com/archives/001115.php


ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)



そうそう、週刊アスキーでは、電脳なをさん もかなりお気に入りの一つなのだけど、これは果たして映像コンテンツなのだろうか? というのはかなり余談。