バブルの物語―暴落の前に天才がいる

ガルブレイスが死んだ。97歳だったそうだ。
ちょうど、いま彼の「バブルの物語」という彼の本を読んでいたので、その感想など。


この本は、1990年に出版された、 A Short History of Financial Euphoria の翻訳である。日本版は、1991年に出版されている。

この本のなかで語られている物語は、今となってはありきたりだ。チューリップバブルミシシッピ会社、南海泡沫事件、そして、ブラックサースデー。パターンはいつも同じだ。市場は同じ過ちを繰り返す という事実を指摘しているだけなのである。
ただ、それを指摘すること難しいと、ガルブレイスはこの本のなかで繰り返しのべている。それは、以下の彼の経験から導かれている。

1955年の春も終わりに近いころ、当時上院の銀行・通貨委員会の委員長だった、J・ウィリアム・フルブライトは、証券市場における投機が軽度に盛り上がりつつあったことに関して公聴会を開いた。この公聴会には、当時のニューヨーク株式取引所の理事長バーナード・バルークや、その他の権威者、または権威者と称する人たちが招聘されたが、私も招きにあずかった。私は崩壊を予言することは差し控えて、二十五年前に何が起ったかについてはかなり詳しく委員会に対して注意を喚起し、証拠金ー株を買う頭金ーの率を予防的に大幅に引き上げるように勧告するにとどめた。私が証言しているうちに、市場はかなり下落した。
これに続く数日間の反応はきびしかった。毎朝、私の発言を非難する手紙の山が郵便配達によって届けられた。最も極端な手紙は、その後のCIAの言によれば、殺してやるという脅しであり、最も穏やかな手紙でさえ、罰が当たって死んでしまうようお祈りをしていますというものであった。(P26)

ここでガルブレイスが述べていることは、バブルであることを理解した人はいても、それを発信することは難しいということである。だから経済紙をいくら読んでも崩壊前にそれがバブルであるということは分からない。(少なくとも、大きな警告が発せられることは期待できない)。

A Short History of Financial Euphoria は1990年に出版され、日本版は、1991年に出版さた。ブラックマンデーは、1987年10月19日におこった。そして、日経平均が、下落に転じたのは、1990年年明けからだった。



では、どうすればいいか。
ガルブレイスは、「暴落の前に金融の天才がいる」と状況が、暴落の前兆だと言っている。天才をみつけることができるようになったら、手仕舞すればいい。ブラックマンデーの前には、目新しい仕組みをひっさげて「天才」と持ち上げられる人が登場するのだという。
そういえば、2000年のITバブルのときには、ニュー・エコノミーという目新しい単語が登場していた。
http://blog.japan.cnet.com/umeda/archives/001048.html



さて、今度同じことがおこったときに、気がつけるだろうか。
ちなみに、バブル崩壊のあとには、長い停滞がおこることも、パターンなのだそうだ。


バブルの物語―暴落の前に天才がいる

バブルの物語―暴落の前に天才がいる

A Short History of Financial Euphoria (Penguin business)

A Short History of Financial Euphoria (Penguin business)

2006/06/01
ちなみに、こんなことをおっしゃっている方がいました。
「そして 近い将来 今回のバブルの暴落のトリガーを引くのは もしかしたらひょっとして 村上ファンドの村上氏を始めとする灘高三人トリオという頭脳集団(天才達)になるかも(シナリオー暴落の前には天才がいるー)・・・と感じるのは わたしだけ?」
http://diary.jp.aol.com/applet/uvsmfn2xc/381/trackback