つきあい方の科学

ゲーム理論の入門書として奨められた本。



1984年にでた古典ではあるけど、内容も古びておらず非常にわかりやすい。この本をよむと、ゲーム理論というのは、世の中を利害関係という構造で理解する企てだったのだと思える。


この本では、囚人のジレンマゲームを反復でおこなう中で、最適と思われる「戦略」同士をコンピュータ上でたたかわせ、その成果を比較するという形で、戦略の妥当性を検証している。

この結果としてわかったのは、戦闘的な戦略より、協調的な戦略のほうがよい成果をあげられるということだ。相手を出し抜こうとする戦略は、一見よさそうに見えるが、繰り返しの中で相手の裏切りを呼び、最終的には高い成果をあげることができない。


正直、なんて教訓的な結論だとと思う。


しかし、後半、協調的な戦略が成果をあげるには、いくつかの条件があることが、徐々に説明される。その一つが、「関係の持続」であり、もうひとつは、「相手を識別できる」という条件だ。逆からみると、、通りすがりのような、持続性がない、かつ、相手を特定する余裕もない、という関係であれば、「協調」ではなく「裏切り」こそが最適戦略になるというのである。


この本が、ビジネス書の棚にあったら、まあ読もうとは思わないのだけど、著者がゲーム理論を専門とする政治学者で、訳したのが生物学者というあたりが説得力のあるところ。



つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)

つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)

本文中に取り上げられている「命題」は以下。

  1. 未来計数 w が十分大きければ、相手の取る戦略に関係なく、最善の結果を引き出せる戦略は存在しない。(P15)
  2. 「しっぺ返し」は、w が十分大きく、かつそのときに限って集団安定である。w の臨界値は、点数表の四つの値、T,R,P,Sの函数として表される。(P60)
  3. 自分の方から協調することもある戦略が集団安定になりうるのは、w が十分大きな場合に限られる。(P63)
  4. 上品な戦略が集団安定であるためには、相手のまさに最初の裏切りに対して怒りを示す可能性がなくてはならない。(P64)
  5. 「全面裏切り」はかならず集団安定である。(P65)
  6. 「全面裏切り」の中に、最小の内輪づきあいの比率pで侵入できる戦略は、「しっぺ返し」のように、もっともうまく相手を見分ける戦略である。(P69)
  7. 上品な戦略の中に、ある戦略をもった個体が単独で侵入できないときには、その戦略が一丸となって内輪付き合いをしても、やはり侵入できない。(P70)
  8. ある規則が集団安定であれば、その規則は領域安定である。(P167)
協調 裏切り
協調 R=3,R=3赤(協調しあう報酬) S=1,T=5(協調した方は食い逃げされ、裏切りには魅力がある)
裏切り T=5,S=0(裏切りには魅力があり、協調した方は食い逃げされる) P=1,P=1(両方とも裏切った懲罰)

図1 (P8)