人生の軌道修正

「心にいい考え方」

というのが、この本でのキーワード。それと対をなして否定的に扱われているのが、「ポジティブシンキング」


この本で言われている「心にいい考え方」というのは、

私の考える「心にいい考え方」というのを一言で言えば、「思考パターンは複雑に、行動は開き直れ」ということです。まず、「思考パターンは複雑に」から説明しましょう。これは「決めつけをしない」ということです。(P35)

「行動は開き直れ」は、言い換えれば「完全主義者になるな」ということです。学校のテストは目指せば満点を取れるかもしれませんが、仕事や人生ではそうはいきません。(P41)

完璧主義でなくても、40代になると危ないそうだ。

 40代は、うつ病になりやすい世代です。この年代になると脳の神経伝達物質が減ってくるという生物学的な理由もありますが、そこには社会的な理由もあります。
人間は20代より30代の方が少しずつ仕事ができるようになるため、会社もそれに併せて責任を増やしていきます。また能力のある人は、40代になってもさらに高いハードルを設定される上に、それを自分から高くしてしまうことさえあります。
 ところが残念なことに、人の能力は物理的には40代くらいで頭打ちになってしまうものです。もちろん年を取っても考え方が柔軟になるとか若い人にない考え方がわかるという意味での発展はありますが、能力的には年齢につれてあがっていくわけではありません。したがって、能力の高い人ほどうつになりやすいということが起きるのです。(P42)


で、この本のいっている「心にいい考え方」というのは、一転突破の目標をもっていても環境がどんどんかわるのだから、臨機応変にせよ、目標を変更するくらい問題なし、という考え方でいけということみたい。


その一方で、こんなこともいっている。

 ある程度しっかりしたハードに、きちんとしたソフトをいれてヴァージョンアップすればパソコンは役に立ちます。同じように、脳も基本的なところがしっかりしていれば、年を取ったからといって使えなくなるわけでも性能が悪くなるわけでもありません。(略)何歳になっても、頭をよくすることはできます。(P142)

そのために勧めているは、

そこで最近では、メタ認知を「メタ認知的な知識」と「メタ認知的な行動」に分けて考えるようになってきました。メタ認知的な知識があるというのは、つまり自分を知っているということですが、さらに大事なのは自己修正、すなわちメタ認知的な行動ができるということだという考え方です。両方がセットになって、はじめて向上につながるのです。
 頭のよさは、日々変化していきます。メタ認知が働いていない人は、いまはそこそこ頭がよかったとしても、そこから伸びていく可能性は低いでしょう。将来性という意味では、メタ認知的な行動ができるかどうかは非常に重要なポイントです。(P160)


で、それについて具体的には、複数の新聞を読めとか、世間を疑ってみろとか、いわゆるメディアリテラシー的なこと。


これをつなげるとどうなるかというと、思ったようにいかなくても気にするな、誰かが否定的にいっても、頭から信用せず他の見方があるんじゃないかと考えてみよう、という話で、わりと当たり障りのない結論でした。

不景気だということで自己啓発で目標管理ノートを作れ、とか目標を持って自己実現ということをいわれるのだけど、あまりに杓子定規に考えてしまうポジティブシンキングだと、達成できなかった時に心が折れたときがつらくて鬱とかにいっちゃ、というのがこの本のかかれた問題意識でしょう。

壁がそんなに高くなければ、失敗してもなにくそ、ということでいいんだろうけど、いくら努力しても実現できないことはできないし、モチベーションのレバレッジかけていると厳しいですもんね。、


人生の軌道修正 (新潮新書)

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