進化しすぎた脳

某サイトで絶賛されていたので、池谷裕二を読んでみる。この本は、池谷裕二が、(アメリカ在住の)高校生相手に語った、大脳生理学の最前線の話をまとめたもの。心と脳の関係について、(当時の)最新のトピックが語られている。池谷の生物としての人間にとって…

メゾン・ド・ヒミコ

ゲイバーのマダムがゲイのための老人ホームをつくって・・という舞台設定の話なのだけど、最後までみて、これのテーマはなんだろうか、と考えてみる。 ゲイの映画だから、テーマがジェンダーというほど単純な話とは思えない。ゲイのかわりに、いろいろな設定…

反社会学講座

パオロ・マッツァリーノの反社会学講座、今度はなんと増補の上筑摩文庫からでてきました。パオロ・マッツァリーノは、イザヤ・ベンダサンと同じなのでイタリア人なわけもなく、おそらく社会系の研究者でしょう。で、この本のやっていることは、社会学の手法…

できる社員はやりすごす

ベストセラーになった「虚妄の成果主義」なのだけど、そのエッセンスは、ほぼ前作、「できる社員はやり過ごす」に含まれている。この2作、タイトルから受ける印象より、かなりまじめに経営学書。ということで、「できる社員はやり過ごす」の内容をダイジェ…

「世界征服」は可能か?

オタキング、岡田斗司夫の評論というか、「世界征服」という事業に対する考察。前書きで岡田斗司夫は、この本はいわゆる謎本ではないといっていて、確かにその通りで謎本ではない。じゃ、なにかといえば、これは「空想科学読本」の経営(学)版なのだ。 岡田…

賃金の不平等化と労働制度の変化 -

引き続き、現代思想のなかの記事から。 賃金の不平等化と労働制度の変化 / 宇仁宏幸(P166-176) 統計調査をつかった、日本における格差の検証がなされている。 格差問題については、ジニ係数の拡大を問題視する意見と、ジニ係数の拡大は、高齢化の影響であり…

現代思想 2007年7月号 特集=ポスト・フォーディズム

特集が、ポスト・フォーディズムなんてなっていたので、久しぶりに現代思想を購入。特集に関連した文章が、12本掲載されているのだけど、そのなかに現れるポスト・フォーディズムの定義はまちまち。 フォーディズムからポストフォーディズムへの移行を特徴…

教師格差

最近の教育の状況を総論的に報告している本。あげられている事例や報告は、それなりに興味深いのだけど、そこは横において、個人的に興味深いとおもったのは、企業とも共通する以下の2点の問題。最初の一つは成果主義で、もう一つはそれに伴う、説明責任の…

行動経済学 経済は「感情」で動いている

行動経済学、なんとか読了。 これ、中身は新書じゃありません。ほとんど教科書です。 と、思いながら、読み返してみたら、はじめに にこう書いてありました。 本書は、行動経済学の入門書であると同時に、経済行動の背後にある心理的・社会的・生物学的基盤…

現代中国の産業

現代中国の産業。このあたりで推薦されていたので読んでみる。とりあえず、最初の感想は「力作」。この本のなかでのキーワードは垂直分裂。今、日本では垂直統合ということが盛んにいわれていて、それを進めないとという雰囲気になっているが、著者は中国で…

ソビエトカメラ党宣言

ここ数年、一部で人気のソビエトカメラなのだけど、その販売ににかかわった人の、エッセイ。 軽妙な文章が、すごくうまい。うますぎる、と思う。ソビエトカメラというのは、主に第二次大戦後に旧ソビエトで製造されたカメラ。おおくは、ライカなどのドイツカ…

空の境界

「月姫」 のゲーム作家、奈須きのこの長編。(つーたって、ゲームをやらないので、月姫がどんな作品かもよくわからないのである) たぶんライトノベル。 とにかく、長編。新書で2段組、上下巻構成で900ページを超える。原稿用紙にしてどれくらいになるんだろ…

働きすぎる若者たち

著者によれば、この本は、すきなことを仕事にしてしまった「優しい女の子たちの物語」(P9)なのだそうだ。「優しい」という言葉がでてくるあたりに、著者のスタンスが感じらられる。 この状態が危険なものであることは、勘のいい方々ならばすぐにお気づきであ…

フランドル

評が結構でていたので見に行ってみる。久しぶりのユーロスペース。 映画の舞台はフランドル。田舎に住むの若者の話だ。男の子たちは、志願して戦争に行く。女の子達は彼らの帰りを待つが、戦争にいった若者は、一人を除いて戦死する。生き残った一人は帰って…

涼宮ハルヒの憂鬱

ROR団には入れそうにないので、SOS団を読んでみる。涼宮ハルヒって評判だけど、そんなにおもしろいの?というか、ライトノベルは本当におもしろいのか?とかいう最近のマイブームも動機。 結論。やっぱ、おもしろい。 そこはかと匂ってくるのは作者、この小…

円の足枷

ROR団周辺のブログで評判なので、買ってみた。 大変おもしろいです。 この本のなかで、提示されている「円の足枷」仮説とは、以下のようなもの。 長期的には、国内卸売り物価ベースの購買力平価が円安の天井として機能している この購買力平価は年率で平均3%…

ウゴウゴルーガおきらくごくらく15年!

ウゴウゴルーガ おきらくごくらく15年! 不完全復刻 DVD-BOX DVD9枚組(本編DISC8枚+映像特典DISC1枚) 気がついたら、もう10年以上前なのですね。あの放送。 当時、junetでウゴウゴルーガMLなるものができていて、わあわあやっていたのも、10年以上前かと…

NHKスペシャル/高速ツアーバス 格安競争の裏で

なにげで見始めた、NHKスペシャルは、高速ツアーバス会社とその下請けの実態を取材したドキュメンタリー。 高速バス業界では、ツアーバスの形をとっての新規参入が起こっている。 その背景は、規制緩和以降、新規参入のチャーターバス会社の増加にともない、…

Transcend TS32MMS64V6F / Libretto L5/080TNLN

現実逃避に、webをうろついていたら、Libretto L5用の増設メモリが、今でもあることを発見。衝動買い。 Libretto L5というのは、2002年発売の、ま、サブノートPCで、当時このクラスにひろがっていた、TransmetaのCrusoe(TM5800)というCPUを搭載したモデル。T…

ミミズクと夜の王

東浩紀の評論を読んだいきおいで、ライトノベル*1の新作を読んでみる。 「ミミズクと夜の王」は電撃小説大賞の受賞作。 ストーリーの構造を思いきり単純化していうと、これは王道的なシンデレラストーリーだ。 虐げられた少女は、森の王に見いだされて、幸せ…

自殺はなぜいけないか・・とか

19日のエントリーで、「ゲーム的リアリズムの誕生」のことを書いたのだけど、某所でゲームと現実に関して興味深い話をきいたので、ちょっとメモ。子供の自殺というは、時々あるのだけど、それに対して、学校ではどうおしえているのか、という話。そこで聞い…

さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生

新聞に書評がでていたので買ってみる。中身はオウムの話。 サブタイトルでネタばれなように、この本の著者はオウム実行犯の一人の同級生だった。この本は、著者自身の「あの彼がなぜ」という疑問を、複雑系の「創発」という概念と、生理学的な説明という2つ…

ゲーム的リアリズムの誕生

2001年の「動物化するポストモダン」の続編にあたる、東浩紀の評論。 ポストモダンの視点から、ライトノベルやゲームにおける、二重構造を解説するもの。この本のなかでは、「物語とメタ物語」、「キャラクターとプレイヤー」の異なる視点から読み解けるよう…

現代思想 2007/3月号 笙野頼子

笙野頼子は、ゼンゼン読んだことなかったのだけど、知り合いに勧められて読んでみる。結論、笙野頼子をゼンゼン読まずに、この本だけ読むのは厳しい。(当たり前か) ネオリベ迷惑を考えるお茶会 - 極私と無政府@だいにっほん 座談会だというのもあるのだけ…

PENTAX K100D

だいぶ前から迷っていたPentax のデジタル一眼レフK100D、メーカーキャンペーンで7000円のキャッシュバックというのに、背中をおされて、ついに購入。標準ズームセットが実売で6万円強、キャッシュバックを考えると、5万台半ばというのは、考えたら激安的な…

論座 2007年4月号

「『丸山眞男』をひっぱたきたい 希望は、戦争。」への応答 論座の2007年4月号は、1月号の赤木智弘「『丸山眞男』をひっぱたきたい」に対するいくつかの「応答」が特集の一つだったので買ってみる。 書いているのは、佐高信、奥原紀晴、若松孝二、福島みずほ…

コーンクリームスープ

川西蘭の久しぶりの新刊。 (ただし、1992年にマガジンハウスからでた小説の一部改変版) いつ読んでも川西蘭の小説の主人公は、クールだ。でもって、なんでおめー、そんなにもてんだよ!とツッコミたくなる。(いまさら高校生の主人公をうらやましがってど…

郊外の社会学(その2)

では、三浦展は、なぜ、まったく逆のことをいっているのか? それは、三浦の郊外論=ファスト風土批判 が、郊外を「そこでないといけない」原風景としているから、ではないだろうか。「どこでもいい」のが郊外である、という視点は、その土地を一つの選択肢と…

郊外の社会学

町田市生まれで、いまは流山にすむ社会学者による郊外論。建築家のように、郊外の建築の不毛さを非難するわけでも、三浦展のように、「ファスト風土」とやや感傷的に批判するのでもなく、郊外とは何者なのかを解いていく。郊外について、最初に以下のように…

沈黙のフライバイ

500系の新幹線を最初にみたとき、「ついに現実化した未来だ!」とおもった。 なんて思う人にはいいと思う。 野尻抱介らしく、あまり心理描写がない。ポンとおかれた会話と地で説明される科学知識とがリンクして、読んでいる側の心理をかきたてていく。文章の…